妻の収入は夫のED及び精神疾患に影響を与える 2013.6.9
こんにちは。
浜松町第一クリニック大宮院 院長の仲川です。
先日、とある論文を紹介されました。
In Sickness and in Wealth:Psychological and Sexual Costs of Income Comparison in Marriage
こちらの英語論文なのですが、気を利かせて日本語のレジュメもくださったので、そちらも合わせて紹介させて頂きます。
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『妻の収入は夫のED及び精神疾患に影響を与える』
<目的>
妻の収入が夫を上回るケースが増加する昨今、「男性は一家の大黒柱である」という社会通念が失われつつある。
本研究では、妻の方が高収入である場合、男性が受ける性機能および精神への影響について検討した。
<方法>
共働きのデンマーク人夫婦2831779名を対象に、1997〜2006年の収入データ(※1)及び薬剤処方データ(※2)を抽出した。
対象を、夫婦間の収入格差がない群を基準に、妻の方が高収入の群と夫の方が高収入の群に分け、ED(勃起不全)治療薬および精神疾患系薬剤の服用状況について、回帰分断モデルを用いて比較検討した。
各疾患の罹患状況については、EDはPDE5阻害薬、不眠症はベンゾジアゼピン系薬剤、うつはSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)の処方データにより確定した。
※1:IDA (Integrated Database for Labor Market Research)
デンマーク政府が発表する国内の年間人口統計データから抽出
※2:RMPS (Register of Medicinal Product Statistics)
デンマーク医薬品局が管理する国内のすべての薬剤処方データから抽出
<結果>
夫婦間の収入バランスとED治療薬服用率の関係をみると、妻の方が高収入の群は、夫の方が高収入の群と比較してED治療薬服用率は有意に高かった(図0.77%vs0.70% p<0.01)。
なお、未婚カップルでは収入バランスによる影響は見られなかった。
妻が高収入の群について、結婚前の収入状況により男性の方が高収入だった場合と女性の方が高収入だった場合で解析した結果、結婚前に女性が高収入だった場合では、 結婚後ED治療薬を服用する確率に変化は認められなかったが、男性が高収入だった場合では有意にED治療薬を服用する確率が高くなった(b=0.221, p=0.024, オッズ比1.247)。
このことから、女性の収入が自分より高いと知らずに結婚した男性でのみ、ED治療薬を服用する確率が高くなることが示唆された。
精神疾患系薬剤については、妻が高収入の群は、夫が高収入の群と比較して夫が睡眠薬および抗うつ薬を服用する確率が有意に高くなることが認められた
(図, それぞれb=0.047, p=0.009, オッズ比=1.048; b=0.055, p=0.016, オッズ比=1.056)。
また、同群の妻においても同様に、抗うつ薬を服用する確率が有意に高くなる事が認められた(図, b=0.046, p=0.003, オッズ比=1.047)。
これらの結果を収入格差の大小にてさらに分析したところ、妻が高収入の群においては、収入格差がわずかであっても、夫がED治療薬・精神疾患系薬剤を服用する確率が高くなることが認められた。
<結論>
妻の方が高収入の男性は、自分の方が高収入の男性と比較してED治療薬・精神疾患系薬剤を服用する確率が有意に高くなることが認められた。
また、女性の収入が自分より高いとは知らずに結婚した男性でも、ED治療薬を服用する確率が高くなることが示唆された。
本試験の結果より「男性は一家の大黒柱である」という社会通念が、夫婦間の収入格差に対する個人の認識に影響を与え、ED治療薬および精神疾患系薬剤を服用する機会が多くなったと考えられる。
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さて。
ほとんどの人がすでにお腹がイッパイになっている若しくは読まずに飛ばした、かと思います。
私もです(ーー;)。
次回ブログにて、この論文に関して解説していこうかと思っています。