LOH症候群 診断 2014.12.13
こんにちは。大宮院の仲川です。
今回もLOH症候群のお話の続きとなります。
診断ですが、性腺機能の評価が必須となります。
LOH症候群において低値となる男性ホルモン(androgen)、そのメインとなるのはテストステロンです。
人間の背中、腰辺りにある腎臓の上にある、副腎皮質から分泌されています。
このテストステロンの『調整』をしているのが下垂体から分泌される黄体化ホルモン(LH)と卵胞刺激ホルモン(FSH)の2種です。
簡単に言うと、LHとFSHが増えるとテストステロンが増え、LHとFSHが減るとテストステロンが減るのですが、それだけではなく、テストステロンが減るとLHとFSHは増え、テストステロンが増えるとLHとFSHは減るように動くのです。
この様に、LHとFSHとテストステロンは丁度いい塩梅に動くようになっています。
LOH症候群においてテストステロンは低下しているため、LHとFSHは増加しているのが通常です。
もちろん、LHとFSHが低下しているケースもありますがその場合は他の疾患の可能性を考えなければなりません。
よって、LHとFSHの血中濃度の測定は必須となります。
そしてテストステロンの測定も必須…なのですが、少し複雑な話もあります。
血中に存在するテストステロンですが、様々な形になっている為です。
主に3つの形態、
・SHIBGと結合しているテストステロン
・アルブミンと結合しているテストステロン
・遊離型のテストステロン(何にも結合していない)
になっています。
白色人種においては上記3つの合計値、総テストステロンが年齢に伴い低下すると言われています。
しかし日本人において、総テストステロン値は加齢により余り低下しないものの、遊離型のテストステロンは低下していくため、遊離型テストステロンがLOH症候群の診断基準としてより望ましいのではないか、と考えられています。
以上より、血中濃度測定の必須事項としては、
LH/FSH/遊離型テストステロン
の3つが挙げられます。
遊離型テストステロンの値としては、
①低値<8.5pg/mL
②8.5≦境界閾<11.8pg/mL
③正常値≧11.8pg/mL
の3つに分類され、①②のケースは場合によってアンドロゲン補充療法を行うとされています。
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ここまで症候学的な話を全くしてきませんでしたが、難しいからです。
具体的には、恣意的に操作し得る、という点が何とも難しいところです。
○○という症状はLOH症候群のせいではないか?
といった疑問、もしくは確信は議論によって決定するものではなく、遊離テストステロンの測定データの参照が必須であるからです。
遊離テストステロン値が低値であればLOH症候群の可能性が高いでしょう。
境界閾であれば…どちらの可能性もあるでしょうし、正常値であればLOH症候群の心配は必要ありません。
さらに、診断の後に来るのが治療、アンドロゲン補充療法(ART)です。
禁忌(ARTを行っては行けない人)ではなければ治療を行うことは可能ですが、長期的な予後や合併症にも注意しなければなりません。
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LOH症候群が世間にどの程度周知されているか分かりませんが、「男性ホルモンが低いなら補充すれば良いでしょ」といった簡単な話ではないのがご理解頂けたなら幸いです。
その考えにより近いのは正直、ED治療薬の使用法だと思います。
最も世間的には、ED治療薬のハードルが高いのでしょうが…
バイアグラ等のED治療薬の使用にあたり、多くの方が一番心配しているのが
「ED治療薬を使うと、使わないと勃起しなくなるのではないか」
という点ではないかと思います。
これについては断言できます。
100%の自信をもって。
「ED治療薬のせいで勃起が弱くなる事はあり得ません」
そうゆう事を仰る方、その原因は、加齢、もしくは使用法が悪いか、どちらかです。
ED治療薬の使用を躊躇ったり、頑張って少ない容量の錠剤を使ったり、1錠内服せず半分に割って使用したり。
ご本人様が一切困ってないのであれば結構ですが、
「薬が将来効かなくなるのではないか」
といった間違った情報を元に薬の使用を控えることに何の意味もありません。ご安心してお使い下さい。