PDE阻害薬の種類 2014.9.21
こんにちは。大宮院の仲川です。
ほとんどの方が興味を持っていないのは分かっていますが続けます。
バイアグラ・レビトラ・シアリスの効果発現・作用時間・PDE阻害作用の違い
前回のブログ内容にリンクした部分もありますので、ご覧いただけると幸いです。
PDEには何種類かあって、その中で5番目のPDE5を阻害する薬がED治療薬として使われている、こんなところだったでしょうか、前回。
PDEには11種類あると言いました。
「同じようにcAMP・cGMPの分解をするけど、少し構造が異なるPDE(酵素)」
が11種類。
「少し」構造が異なるPDE…
バイアグラ・レビトラ・シアリスといったPDE5阻害薬ですが、他のPDE(1~11)の阻害はしないのでしょうか?
少し構造が異なる、とは他は似てるという意味です。
結論から言うと、「少し」阻害します。
これが、ED治療薬の副作用といった部分にリンクしてくるのです。
また、このアイソザイムですが、遺伝子型に影響を受けると言われています。
すなわち、ED治療薬の副作用について個人差が大きいと言われているのはこのためです。
では、その程度なのか。ヒントとなる論文がこちらです。
この中でも重要なのはtable1とtable2です
[table1]
[table2]
table1では、PDE1~11が体のどの部分に分布しているか、
table2ではバイアグラ・レビトラ・シアリスがPDE1~11をどの程度阻害するか、
を表しています。
意味不明な内容+良くわからない言語はさすがに不親切すぎるので、日本語にしてみました。
PDE | 主な局在組織 | バイアグラ | レビトラ | シアリス |
1 | 脳・心臓・血管平滑筋 | 41 | 136 | >1000 |
2 | 副腎皮質・脳・心臓・海綿体 | >1000 | >10000 | >1000 |
3 | 心臓・海綿体・肝臓・膵臓・血管平滑筋・血小板 | >1000 | 2696 | >1000 |
4 | 肺・肥満細胞・血管平滑筋 | 375 | 2308 | >1000 |
5 | 海綿体・肺・血管平滑筋・血小板・脳・食道 | 1 | 1 | 1 |
6 | 網膜 | 7.4 | 15 | n.d. |
7 | 骨格筋・T細胞 | >1000 | 5168 | >1000 |
8 | 精巣・甲状腺 | >1000 | >10000 | >1000 |
9 | 広範囲に分布 | >1000 | 3786 | >1000 |
10 | 脳・精巣 | 447 | 1123 | >1000 |
11 | 骨格筋・前立腺・肝臓・腎臓・下垂体・精巣 | 203 | 346 | 7.1 |
バイアグラ・レビトラ・シアリス、いずれもPDEの中で最もPDE5を阻害する薬剤である事に間違いはありません。
この表の数字ですが、数字が小さい方が、少ない薬剤量で効果を出す(PDEを阻害する)と考えてもらえるといいと思います。
バイアグラを例に挙げれば、PDE5をある一定量阻害するのに1錠必要であるのに対し、PDE1を阻害するためには41錠必要になってくる、といった具合です。
つまり、この中で数字が大きいPDEアイソザイムに関しての副作用はほとんど考えなくても良いと思います。
少し前、どこかのブログに
「PDE3阻害薬として知られているアミノフィリンは強心作用がある」
「PDE5阻害薬も似たようなもので、心臓に負担がかかる」
などという、一見すると正しく見えるような表現が平然と書かれていました。
医療従事者であればさておき、そこまで詳しくない人であればそのような人の恐怖感を煽るだけの文章でもだまされてしまうことがあるのではないかと心配になります。
上記の通り、バイアグラ・レビトラ・シアリスのPDE3阻害効果は極めて弱いです。
先ほどの例になぞらえるなら、錠剤を1000錠単位で使用しないとPDE3の阻害は十分に行えないレベル。
そのような量を使用するケースなどまずありません。
根拠に基づいた、安心できる情報として、上記を紹介できればと思い今回のブログとさせて頂きました。