プロペシアは錠剤のまま飲んでください 2013.10.5
こんにちは
浜松町第一クリニック大宮院、院長の仲川です。
今回はAGAに関して。
まず、2010年版の男性型脱毛症診療ガイドランをご覧下さい。
様々な治療法に対する推奨度が書かれています。
A.エビデンスのレベル分類
Ⅰ システマティック・レビューメタアナリシス
Ⅱ 1 つ以上のランダム化比較試験
Ⅲ 非ランダム化比較試験
Ⅳ 分析疫学的研究(コホート研究や症例対照研究)
Ⅴ 記述研究(症例報告や症例集積研究)
Ⅵ 専門委員会や専門家個人の意見
B.推奨度の分類
A 行うよう強く勧められる(少なくとも1 つの有効性を示すレベルⅠ
もしくは良質のレベルⅡのエビデンスがあること)
B 行うよう勧められる(少なくとも1 つ以上の有効性を示す質の劣るレベルⅡか
良質のレベルⅢあるいは非常に良質のⅣのエビデンスがあること)
C1 行うことを考慮してもよいが,十分な根拠がない(質の劣るⅢ~Ⅳ,良質な複数のⅤ,あるいは委員会が認めるⅥ)
C2 根拠がないので勧められない(有効のエビデンスがない,あるいは無効であるエビデンスがある)
D 行わないよう勧められる(無効あるいは有害であることを示す良質のエビデンスがある)
人種的差異、分野によるエビデンスの不足、日本の社会的特殊事情、さらにガイドラインの実用性を勘案し、エビデンス・レベルを示した上で推奨度を決定した。
…となっています。
アルファベットの最初のほうが(Aに近い方が)より有効な治療法としての根拠が強い、と考えて頂ければと思います。
そして、このガイドラインを作成したのは『日本皮膚科学会』となっております。
当院に来院される方に、○○といった治療法を聞いたんだけれどもどう思いますか?といった質問をされることがあるのですが、基本的にはこのガイドランをもとにして考えるのが良いかと思っています。
載ってない治療法に関しては、少なくとも日本皮膚科学会はその有効性について何も担保していない訳ですしね。
表題にありますが、プロペシア錠に関してです。
添付文書をご覧になればわかるかと思いますが、錠剤のままの内服を推奨しています。
いくつかのクリニックでは粉末で処方している模様ですが、少なくとも当院では錠剤での処方を行っていますし、分割や粉砕は決してしないようお願い申し上げます。
最も大きな理由ですが、プロペシア錠の粉末が空気中に飛び、妊婦がそれに暴露された場合大きな問題となるからです。
これは周りにいなければよい…という問題でもありませんし、厳重な管理が求められるかと思うからです。
それを粉末にして処方するのはいかがなものか・・・と個人的には思います。
続いて、ガイドランにありましたミノキシジルについて。
1970年代後半に高血圧治療薬(内服薬)として開発されたミノキシジルは副作用として多毛症を引き起こすことが報告されました。この副作用である多毛症を起こすことを利用して作られたのが発毛薬である外用のミノキシジルです 。
日本では、商品名「リアップ」という外用薬が薬局にて販売されています。
1987年、米国の製薬企業であるUp & Jhon社は臨床治験の成績を発表、男性型脱毛症の頭頂部患者のうち30%に毛髪再生を認めたというものでした。
そしてFDAはロゲインを「頭髪治療薬」として認可しました。
しかし、当時はミノキシジルの薬理作用と毛髪再生の作用機序は明確に証明されておらず、その後の研究で、角質化細胞の増殖促進効果、皮下組織の血流促進効果、毛乳頭細胞の血管内皮細胞増殖因子の増加効果などが報告されましたが、 現在では毛乳頭細胞においてPTGS1が活性化され、PGE2の合成が高まり毛髪再生が促進されると考えられています。
このミノキシジル、ガイドランをご覧いただければ分かりますがあくまで『外用』です。
ではなぜ、このように発毛効果の高いミノキシジルを内服で使用しないのか。
リサーチ実験において犬に3mg/kgの容量で内服させたところ心臓破裂が起こったからです。
心筋アポトーシスの抑制することより心筋肥大が起こり破裂したと考えられたからです。
その後、同様に何回も犬の実験を行いましたが犬の心筋破裂は起こらなかった為、その真偽は不明ですが…
こういった経緯があったことから、実際の頭髪治療には使われておりません。世界的に見ても、頭髪治療用の内服薬としてのエビデンスは無いと考えられています。
ミノキシジル内服に関しては、根拠がない、ということになるかと思います。